お金になる価値を見える化(KPI)する(VDシートその1)

お金になる価値を見える化(KPI)する(VDシートその1)
Visualizing (KPI) Values that make Money (VD Sheet part 1)

 企業や私達の経済活動において確実に儲かることができればとても魅力的です。この魅力はリスクを伴わないで収益(お金)を得られることで、欲を言えば、何もすることなくお金が勝手に増えて、好きなだけお金を毎日使うことができるようになればと憧れる人も多いことでしょう。ところがこのような現象が発生するためには条件が必要で、不十分な条件下においては欲を満たす贅沢ができないのです。ここでのポイントは、この条件を見える化することができれば効果的にこれらの情報を利活用することができるようになるのです。VD(Value Development)シートは企業価値の条件を見える化するために開発された手法で、経済価値、社会価値、潜在価値、課題を見える化したり、あるプロジェクトにおけるテーマ、ブランディング、事業戦略、販売戦略などを見える化させたりすることにも役立ちます。この見える化は企業価値の源泉となる情報とその情報のベクトル(情報が向かっている方向(対象)とその対象への量(金額や数値))を抽出し、同時にその対象が得る情報の正体を抽出しながら分析することで条件となる情報を明らかにして行きます。VDシートは一般的には明らかにすることが難しいプロダクト・マーケット・フィット(PMF: Product Market Fit)やプロブレム・ソリューション・フィット(PSF: Problem Solution Fit)を効果的に、また、効率的に分析することもできるので、高額なコンサルティングサービスやブランディングサービスに頼る必要はありません。VDシートは価値経済工学で用いるVDメッソドを発展させることで、企業価値とその企業価値を左右する条件を見える化(KPI)するために開発された手法で、このVDシートの結果をVM(Value to Money)チャートを用いて深層分析することでお金になる企業価値(経済価値)を効率的に開発できるようになり、最終的には各条件とそのスカラ(大きさのみで表され、方向をもたない量)もしくはベクトル(方向(対象)とスカラ)で構成された格子チャートを組立てることで企業価値や事業価値の条件とその格付けを見える化させることができます。格子チャートは2項モデルと3項モデルを組み合わせたモデルにすることで、視覚的・直感的に経済価値を評価・分析できるようにするものですが、VDシートの分析精度に応じてその予測精度や運用性能は異なるので、企業経営においては毎四半期おきに企業価値の条件を見える化したり、事業価値においては事業の継続期間に応じた見直しするタイミングを定めておいたりすることが奨励されます。金融工学では資産のダイナミックス(現在と未来の証券価格やオプション価値等)を分析したり運用したりするために2項格子モデルや日本の数学者伊藤清先生が研究開発した確率過程の変換公式である伊藤過程(伊藤の定理)が用いられています。価値経済工学では金融工学で研究開発されてきたこれらの推定モデルを企業価値や事業価値の評価に発展させる研究を続けていて、企業リスクや事業リスクを分析したり推定したりする手法としてブラック・ショールズモデルを用いた対数正規分布に応じた価値過程も研究しています。

 会社経営や事業管理では経営や事業の見える化手法をKPI(Key Performance Indicator)と呼び、企業経営や事業管理において重要となる項目を選定してその四半期ごとの目標値を定めたりします。例えば、毎四半期の売上金額の下限を1億円と定めたり、毎四半期における売上金額の増加率を5%に定めたりすることで、各四半期における営業目標が数字で明確化され、経営者に限らず社員全員でその数字を意識しながら業務を進めることができるようになるのです。同様に多くの企業ではPDCAサイクル方式を導入して、毎四半期のKPIを達成するためにPlan(計画)、Do(実行)、Check(測定・評価)、Action(対策・改善)のプロセスを循環させることで進捗の見える化や効率化に必要な情報を抽出する努力を行います。KPI法やPDCA法はある種ビジネスの基本として多くの企業で利活用されていますが、KPIやPDCAをすることが仕事になってしまい、本来の目的である企業活動の意味が分からなくなってしまう傾向と課題があります。企業の従業員はKPIを意識してPCDAすることに必死で、本来その企業が掲げている理念や企業価値がないがしろになり、企業内で何をしたら良いのか、また、何を本来するべきなのか分からなくなってしまい、ある種の企業版生活習慣病に至ってしまう企業も見受けられます。この企業の生活習慣病を予防するためには企業の価値を見える化して、経営者と社員がその見える化された情報を意識した上で、KPI・PDCAすることです。企業経営に限らず事業管理においても同じで、見えない管理や業務を毎日進めるのはとてもストレスで毎日デスクに座ってメールを確認すること以外に仕事に対しての質感が衰えて、その業務に関わる人達に重篤な病気を引き起す原因にもなり、企業が社員のメンタルストレスや健康に気を払う結果に至る要因の1つにも成り得ます。

 企業が成長する上で収益を開発することはとても重要ですが、企業の経済価値は株価のように常に変化し続けます。この変化する経済価値を株式市場に上場されている株式の株価のように公開されている情報やデータから分析することは難しいので価値経済工学では企業価値や事業価値を構成している情報をVDシートのフォーマットを用いて価値の①お金と同じ性質の分析、②情報の機能性分析、③潜在需要の分析を行うことでお金になる価値の性質を明らかにします。VDシートの左端の列には価値の項目を書出し、その価値に対応する源泉とベクトルを3つ定義します。源泉とは、その価値を必要条件とした場合に十分条件を満たす情報(関連コラム:お金になる価値の必要条件と十分条件)で、ベクトルはその価値が向かう対象と定量的な量を意味します。例えば、表1を参考に、ウェルネス・ワインを新規事業として販売するとしましょう。価値をウェルネス・ワインと定義して、その下に源泉とベクトルを3つずつ書き出します。源泉とはウェルネス・ワインの十分条件に相当する情報(言葉)で、ワイン、有機葡萄、オーガニック、ビオディナミ、自然との調和、低アルコール、ストレス緩和、疲労回復、飲むマインドフルネスと言えばウェルネス・ワインと説明できる関係を持っています。源泉はウェルネス・ワインを構成している価値の要素になり、ウェルネス・ワインと言えば人にもよりますが、源泉に書き出した言葉のどれかもしくは一部または全部が連想されることを意識します。次に、この源泉が向かう対象と定量的な量を定義します。この例では源泉の向き(対象)は働いている女性で、定量的な量(スカラ)を定価3,000円/本と定義しています。つまり、ウェルネス・ワインを働いている女性に定価3,000円/本で販売することを定めます。同様に、源泉②・③、ベクトル②・③、も定義することでウェルネス・ワインを構成する経済価値の源泉とベクトルを見える化することができます。

表1 VDシートの最初のコラム(列)

ウェルネス・ワイン
源泉①:ワイン、有機葡萄、ビオディナミ、自然との調和、低アルコール、ストレス緩和、疲労回復、飲むマインドフルネス
ベクトル①
源泉の向き(対象)⇒働いている女性
定量的な量(スカラー)⇒定価3,000円/本
源泉②:
ベクトル②:
源泉③:
ベクトル③:

 表1を作成したら、次に、表2の経済価値の分析を行います。ここでは先ず抽出した源泉の寄与度を可視化させます。ウェルネス・ワインの価値を構成する各源泉でその影響力(寄与度)が大きいと考えている順に上から源泉を並べて、その横に価値全体の寄与度を100%として、各源泉の個別の寄与度をカッコ内に%で評価して行きます。ウェルネス・ワインにおいては源泉ワインの影響力が最も大きく、続いて源泉有機葡萄、ビオディナミ、飲むマインドフルネスが続き、源泉低アルコール、ストレス緩和に続いて源泉疲労回復と自然との調和が続く分析となりました。この分析の答えは1つではなく、あくまでも分析を行っている人の価値観で経済価値分析表を組立てるのがポイントです。次に、厚生労働省の発表(参考情報1)によると、令和3年(2021年)の日本国内女性の労働力人口は3,057 万人で、ウェルネス・ワインをベクトルで定めた働いている女性の1%に年間5本楽しんでもらうことを仮説として立てると3,057 万人×1%×5本=約152万本の販売計画が算出できます。またベクトルで定めた定価3,000円/本から、ウェルネス・ワイン事業による売上が約45億6,000万円であることが見積もれます。この売上額に対して各源泉の寄与度をかけることで各源泉に対応する経済価値を算出することができます。

表2 経済価値分析表

 ここでは、この経済価値分析表を用いてVDシートで抽出したお金と同じ性質の分析方法を解説したいと思います。表3にはお金と同じ性質の分析例をまとめてあります。ここではお金と同じ性質の価値をベクトルの対象となる働いている女性に対して行います。ウェルネス・ワインが提供できると思われる価値を「何かを計れる?」、「何かと交換できる?」、「何かを貯めることができるか?」の3つの機能に分けて分析を行います。これは経済学や金融工学において、お金を3つの機能の集合体として定義されていて、この3つの機能とは、価値の尺度(計測)機能(Measurable Value: MV)、交換機能(Changeable Value: CV)、価値の保存(貯留)機能(Savable Value: SV)とされています。この定義に基づいて、価値経済工学ではこのお金と同じ機能を対象としている価値を見出すことで人工的にお金と同じ機能集合に対応する価値を開発する作業を行います。VDシートでは先ず表3に書き出したように、定義した経済価値(ウェルネス・ワイン)に対応する各機能(言葉)を3つずつ書出して、その書き出した各機能の十分条件となる情報(言葉)を正体として3つずつ以上抽出して行きます。数学的な背景の解説は割愛しますが、各機能を3つずつ、また、各機能に対応している正体を3つずつ以上抽出することには重要な意味があります。この背景に関しては別のコラムで解説したいと思います。ここでは機能として書出した言葉とその正体が一致することもあるので、無理に十分条件になる言葉をひねり出す必要はありません。抽出した言葉と正体が一致している場合、その言葉(情報)は必要十分条件を満たしている言葉(情報)と言います。

表3 お金と同じ性質の分析例

 お金と同じ性質の分析における各機能となる言葉とその正体を抽出したら、各正体の集合に対応していると考えられる源泉を各正体の集合の下に追記して行きます。この過程において、正体の集合に対応する源泉がない場合、おそらく抽出できていない源泉があることが示唆されます。このような場合はその正体の集合に対応する源泉を追記することで源泉を補強します。この例では、「健康」を新たに源泉の集合に加え、各源泉の寄与度を再計算しています。

表4 お金と同じ性質の分析シート

 表4を作成したら、表2で定めた源泉の集合と各寄与度を更新して、以下表2-2を作成し、表4において各正体の集合に対応する各源泉に寄与度を追記して、各機能における正体の集合(十分条件となる言葉(情報))に対応している源泉の寄与度を足し合わせることで算出します。同様の算数を全ての機能に対して行い、各機能の寄与度合計と寄与度率を算出します。ここでは、寄与度合計の全ての合計が450%(80%+180%+190%)になるので、各寄与度合計を450%で割ることで各寄与度率の算出が行えます。

表2-2 源泉を更新した経済価値分析表

表5 お金と同じ性質の寄与度と寄与度率

 表5の結果からウェルネス・ワインが働いている女性に提供できるお金と同じ性質の機能として、何かを計れる機能の価値(MV)が17.8%、何かと交換できる機能の価値(CV)が40.0%、何かを貯めることができる機能の価値(SV)が42.2%であることが見える化できました。この分析をプロダクト・マーケット・フィット(PMF: Product Market Fit)に用いる場合、販売を計画しているウェルネス・ワインは働いている女性でお客様の価値として交換したり、貯めたりできる価値観に敏感な人達に効果的な価値を備えていて、お客様の価値を計ることができる価値観に敏感な人達には情報の機能が低いことが分析できます。仮にお客様の価値を計ることができる価値観に敏感な働いている女性達にウェルネス・ワインを販売したい場合、現在の源泉に働いている女性が自分の価値を計ることができる新しい言葉・情報を加えることでウェルネス・ワインのマーケット・フィットを設計開発することが可能となり、商品を市場に提供する前にプロブレム・ソリューション・フィット(PSF: Problem Solution Fit)を効果的に分析しながら、市場に商品を上市した際に機能する情報を商品の価値に組み入れることが可能となります。VDシートは企業や事業の経済価値を見える化させる1つの手法で、大規模なアンケートや市場調査を行わなくても企業や事業が包含している情報を分析することで企業価値や事業価値の設計開発に役立ちます。このコラムでは数学的な背景の解説は割愛していますが、VDシートは数学的に経済価値を運用するための準備過程になります。この一方で、VDシートで抽出した情報を効率的に経済価値にする手法としてVM(Value to Money)チャートがあります。このVMチャートではVDシートの分析結果を用いてお金になりやすい価値を戦略的に開発するための手法で、何かを計れる機能の情報(MV)、何かと交換できる機能の情報(CV)、何かを貯めることができる機能の情報(SV)から必要条件となる情報を分析し、最終的にはお金になりやすい価値(情報体)を予測し、その予測された情報体(価値)をベクトルで定める市場に対して効率的にチューニングする為の情報の形、量、質をチャート化(見える化)させることで経営管理や事業管理に役立てることを目的にしています。

 会社や事業の全ての情報を見える化することはできませんが、会社や事業の価値になる情報をKPI(Key Performance Indicator)として抽出し、効果的にこれらの情報を利活用するための手法がVDメソッドで、VDシートはVDメソッドを企業の戦略的な用途に合わせて発展させた手法として開発されました。価値経済工学では情報をレゴのブロックに例えて説明することがあります。VDメソッドやVDシートで抽出された情報はレゴの1つ1つのブロックに相当していて、ブロックを組立ててどのような構造体を作るのかは会社や事業の戦略であり企業や事業の価値になるのです。分かりやすい構造体を作れば多くの人に理解され易くなり、複雑で見たこともない構造体を作ると人に理解され難いことになります。価値経済工学では情報の形、量、質を設計・調整できるようにすることで企業や事業の目指す価値を効率的に開発できるようにすることを目的に研究開発が進められています。

著者 並木 幸久

Ver. 2407010001

参考情報

1 働く女性の状況、厚生労働省、https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/josei-jitsujo/dl/21-01.pdf、2024/03/17

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