ウェルネス経済:ウェルネス市場とウェルネス・テック
Wellness Economics: Wellness Market and Wellness Tech
ウェルネス経済は自分らしさや人(自分)の生活の質(QOL)を維持もしくは豊かにするための期待価値に対して発生する期待経済ですが、この期待価値と期待経済の関係はウェルネス・テックの発展に伴って高精度な価値とそれに応じた適正な経済に進化します。現在(2024年4月時点)では、個々人によりその期待価値は異なり、また、その期待経済も異なる市場ですが、実際の市場として2024年における世界のウェルネス市場規模が1.8 trillion米ドル(約273兆円、USD1=JPY151.7250の場合)であるとMcKinsey & Companyが推計(参考情報1)しています。興味深い特徴は全ての世代において、Z世代(1997年~2012年生まれ)が最もウェルネス経済における消費者で、次いでミレニアル世代(1981年~1996年生まれ)で、Appearance(容姿)、Health(健康)、Fitness(フィットネス)、Nutrition(栄養)、Sleep(睡眠)、Mindfulness(マインドフルネス)においてはZ世代が他の世代よりも最もウェルネス消費が強く、ミレニアル世代はAppearance(容姿)、Fitness(フィットネス)、Nutrition(栄養)、Sleep(睡眠)、Mindfulness(マインドフルネス)においてZ世代の次に消費が大きいのです。日本では少子高齢化が深刻で、高齢者をターゲットにした市場に多くの企業の関心が集まりがちですが、ウェルネス経済においてそのけん引役はZ世代やミレニアル世代のような若くて働き盛りの世代で、先細りする市場ではなく、今後益々その成長が期待できるのです。
ウェルネス経済の1つの特徴として科学的な根拠やデータに基づいたエビデンスが消費を促しています。消費者はウェルネス製品やサービスが科学的な証拠に基づいている情報に経済価値を見出していて、健康関連商材やサービスにありがちな何となく健康に良いかも知れないけど消費が発生する特徴とは異なります。また、ウェルネス経済には選択性の特徴もあり、皆ではなく、あるウェルネス商材やサービスが自分により適しているのか選択できることが重要で、この選択性はウェルネス関連商品やサービスの付加価値にもなっています。より重要なのはこのトレンドはより進化することが予測され、ウェアラブル・デバイスや遺伝子検査等のバイオメディカル検査結果等に対応した商品やサービスが増え、ひいてはリアルタイムで自分の生体情報に応じた商品やサービスが提供される日も近いかも知れません。レストランで食事をする際に自分の生体情報や医療データが自動的に共有されたり、利活用されたりすることで、こらから食べる食事に自分の付加価値を反映させられるようになり、今摂取した方がよい栄養が含まれるようになったり、今美味しいと感じられる味覚に合わせた味付けの食事が提供されたりするようになるかも知れません。美味しい食事や自分の健康に良い食事はウェルネスですが、ウェルネス経済が成立する特徴として、供給者と消費者の間に情報の双方向性が不可欠で、この双方向性はあなたの情報が常時インターネットに接続され続けること(IoYou: Internet of You)で実現されます。データセキュリティーや個人情報保護の問題などを解決する必要はありますが、ブロックチェーン技術を応用したり、バイオメトリクス(生体認証技術)を応用したりすることでウェルネス市場は更なる拡大を続けることが予測されます。このウェルネス経済の成長にはウェルネス・テックと生体情報の交換システムの進化が不可欠で自分らしさや人(自分)の生活の質(QOL)を維持もしくは豊かにするための技術革新と自分の情報を第三者やモノに正確に伝えることができる仕組みが必要となり、近い将来では自分の情報を外部へ転送するための半導体(ウェルネス半導体)の登場が予測されます。人は一般的に言語でコミュニケーションをおこないますが、このウェルネス半導体は人と人、人とモノ、人と生物・植物とのコミュニケーションにおいて言語を必要とせず、ある定量的もしくは定性的なコミュニケーションを行うために必要十分な情報を交換するための仕組みです。ウェルネス半導体が実現されるためにはある定量的もしくは定性的なコミュニケーションを行うためのロジックが必要となりますがこのロジックの開発は価値経済工学で研究が進んでいて、人がウェルネスを得るために十分な情報と必要な情報をWELLNESS AI™が解析することで実現されるかも知れません。
McKinsey & Companyによると、米国だけでも、ウェルネス市場は 約4,800 億米ドル(約72兆円、USD1=JPY151.6160の場合)に達していて、年間約5~10% の割合で成長していると推計されています。米国の約82%の消費者が日常生活において健康の維持を最優先事項または重要事項と考えていて、英国では約73%、中国では約87%と同様の傾向が調査されていて、このトレンドは、特にZ 世代とミレニアル世代の消費者に当てはまっているのです。容姿、健康、睡眠、栄養、フィットネス、マインドフルネスの領域においては、Z 世代とミレニアル世代は年齢の高い世代よりも多くのウェルネス製品やサービスを購入している実態があるのです。つまりインターネットやSNSなどから情報を得る世代が現在ウェルネス経済の主役で、ウェルネス経済のトレンドには情報の速さと質が特徴で、信頼できるウェルネス製品やサービスは市場で流通し、粗悪なウェルネス製品やサービスは淘汰されやすい市場です。近い将来ある加工食品や市販薬を手に取るだけで自分の体質や健康に合わないことが把握できたり、自分のウェルネスにそぐわなかったりする情報スマートフォンやタブレットから表示されなくなるかも知れません。さらに、全てのインターフェイスがあなたの生活の質を高めるように機能し、あなたに必要な情報を優先的に表示するようになるかも知れません。1995年頃からインターネットが商業化されることにより情報(IT)革命が加速し、インターネットを通して、消費者や企業は世界中の情報を簡単に、また、低いコストで入手できるようになり、それによって経済・社会に大きな変革が起きました。このIT革命と同じように、ウェルネス経済はウェルネス半導体と生体情報の交換システムにより自分の情報が安心安全に、また、自分を維持したり豊かにしたりすることができるようになることで質の革命、すなわちQOL(生活の質)革命により人類に新しい経済価値と社会価値をもたらすことになると予測しています。
ウェルネス経済は私たちの気付きよりも早くその実態が鮮明になり、ウェルネス市場は実経済において大きな比重を占め初めています。去年(2023年)には市場調査のカテゴリーにおいて、Health and Wellness市場と呼ばれていたのが今年(2024年)にはWellness市場と呼ばれ始めています。これはウェルネス市場が明らかに健康や医療の市場とは異なるトレンドがあり、Health(健康・医療)とウェルネスを一緒にするのが不適切な実態が鮮明になっているのです。但し、現在のウェルネス経済は期待価値に対する期待経済が大半を占めていますが、今後このトレンドは逆転し、第一世代のウェルネス市場では、Evidence-Based(科学的根拠に基づいた)情報がウェルネス市場では付加価値から経済価値の礎石となり、第二世代のウェルネス市場では、自分の情報に応じたもしくは対応した商品やサービスに経済価値が備わり、第三世代では、質(情報)を第三者・モノ・生物・植物と共有したり交換したりできる市場が形成され、第四世代では、年齢に関係のない、拡張・強化された老化とより自分化・より豊かな生活の質がもたらされる市場が形成されることでQOL革命が鮮明になることでしょう。Ageless, Augmented/Enhanced Aging, and Personalized/Enhanced QOL are followed by QOL revolution.
著者 並木幸久
Ver. 230402001
<参考情報>
- The trends defining the $1.8 trillion global wellness market in 2024、McKinsey & Company、https://www.mckinsey.com/industries/consumer-packaged-goods/our-insights/the-trends-defining-the-1-point-8-trillion-dollar-global-wellness-market-in-2024 、2024/4/2
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